SaaS乱立問題 — ツールを増やしても手作業が消えない理由と解決策
ツールを増やしても残業が減らないのは、時間を消費しているのがツールの「中」の操作ではなく、ツールとツールの「間」で人が行う転記・突合・電話だからです。解決策は、もう1本SaaSを足すことでも乗り換えることでもなく、既存ツールをそのまま残して間の工程をAIで埋める「連携ハブ型」の設計です。
基幹システムを入れ、ポータルに掲載し、チャットも電子契約も導入した。それでも夕方になると転記と電話が残っている——多くの不動産会社で聞く悩みです。この記事では、現場常駐で不動産会社のAI導入を支援している株式会社LogTechが、SaaS乱立問題の正体と、ツールを増やさずに手作業を減らす考え方を解説します。
ツールを増やしたのに、なぜ残業が減らないのか?
まず前提として、個々のツールが悪いわけではありません。基幹システムは契約・入居者データの管理を、ポータルは集客を、チャットは連絡を、電子契約は締結を、それぞれきちんと果たしています。どのツールも自分の守備範囲の仕事はしているのです。
問題は、1件の申込や1件の反響が、複数のツールをまたいで流れていくことにあります。ポータルに届いた反響を基幹システムに入力するのは誰か。申込フォームの内容を審査書類と突合するのは誰か。答えはいつも「人」です。ツールとツールの間の工程は、どのツールの守備範囲でもないため、契約数が増えるほど「間」の手作業だけが積み上がっていきます。
ツールを1本足すたびに入力箇所とログイン先が1つ増え、月額費用も増える。それなのに間の工程は誰も引き受けていない——これがSaaS乱立問題の正体です。
SaaSの「間」に残る手作業とは?
「間」の手作業とは、あるシステムの情報を見ながら別のシステムへ入力・照合・連絡する工程の総称です。転記・突合・電話・掲載更新の4種類に大別でき、いずれも定型性が高いためAIに渡しやすい領域です。
| ツール間の経路 | 間に残る手作業 | 起きやすい問題 |
|---|---|---|
| ポータル(SUUMO・LIFULL HOME'S等)⇔ 基幹システム | 反響情報の入力、掲載情報の更新・差し替え | 一次返信の遅れ、掲載情報の鮮度低下 |
| 申込書(PDF・FAX・Webフォーム)⇔ 基幹システム | 申込内容の転記、審査書類の準備 | 繁忙期の入力待ち行列、転記ミス |
| 申込書 ⇔ 契約書 ⇔ 基幹データ | 三者間の条件の突合、目視チェック | 賃料・日付・名義の不一致の見落とし |
| レインズ・ATBB ⇔ 基幹 ⇔ ポータル | 物件情報の二重・三重入力の準備と確認 | 同じ物件を何度も入力する徒労感 |
| 電話 ⇔ 空室データ | 物確電話への応対、空室状況の口頭確認 | 担当者の作業中断、応対のばらつき |
自社でどの経路にどれだけ時間が残っているかは、LPの業務理解セクションで業態別に展開できます。たとえば申込書から基幹システムへの転記は、当社のデモ実績では1件約30分の作業が約2分になりました。「間」の工程は定型性が高いぶん、AIに渡したときの効果もはっきり出ます。
SaaSを乗り換えても解決しないのはなぜか?
「今のツールが使いこなせていないから、別のツールに変えよう」という判断は、多くの場合うまくいきません。乗り換えで変わるのはツールの「中」の使い勝手であって、ツールの「間」の工程は新しいツールでもそのまま残るからです。むしろ移行作業と再教育のコストが加わり、現場の負担は一時的に増えます。
同じ理由で、「もっと多機能な1本にまとめる」アプローチにも限界があります。不動産業務は集客・契約・管理・会計と裾野が広く、すべてを1本でカバーするツールは現実には存在しにくいためです。どこかで必ず複数システムの併用になり、「間」が生まれます。
問われるべきは「どのツールを使うか」ではなく、「ツールの間の工程を誰が引き受けるか」です。
「間」を埋める連携ハブ型という考え方
連携ハブ型とは、レインズ・ATBB・SUUMO・LIFULL HOME'S・at home・楽待・健美家・賃貸革命・いえらぶCLOUDといった既存システムを置き換えず、その間で人が担っていた転記・突合・入力準備・一次対応をAIが引き受ける設計です。ポイントは3つあります。
- 既存システムが業務の起点のまま — 現場が毎日見る画面は変わりません。AIは書類やデータを読み取り、各システムへ入力できる形に整えて人に渡します。
- 承認ゲートを必ず通す — AIが作成した書類・送信物は、人が承認するまで外部に出ない設計を全工程で共通にします。「ドラフトまでがAI、確定は人」という線引きです。
- 規約の範囲で設計する — 外部システムとの連携は、各システムの規約・運用ルールの範囲で設計します。自動操作で無理に埋めるのではなく、入力データの準備・整形・チェックをAIが担い、確定操作は人が行う形が基本です。
実際にどんなエージェントが動くのかはAIエージェントの実例で紹介しています。
既存ツールはそのまま使い続けられる
連携ハブ型のもう1つの利点は、これまでのツール投資が無駄にならないことです。基幹システムに蓄積したデータ、ポータルの掲載実績、現場が慣れた操作——これらはすべて資産として残ります。解約もリプレイスも前提にしないため、「また新しいツールを覚えるのか」という現場の抵抗が起きにくく、導入の失敗要因を1つ減らせます。
逆に言えば、連携ハブ型の設計には自社の業務フローの正確な把握が欠かせません。どの書類がどの経路で流れ、どこで誰が何分手を動かしているか。この解像度が、AIに渡せる工程の特定精度を決めます。
導入の進め方 — ツールではなく業務から始める
当社では、次の3フェーズで進める形を標準にしています。
- 現場常駐で業務を理解する(PHASE 01) — 店舗・管理部門に入り、ツールの間で発生している手作業を件数と時間で棚卸しします。ここで「どの間を埋めると効果が大きいか」を特定します。
- その会社仕様のAIを開発する(PHASE 02) — 汎用ツールをそのまま当てるのではなく、自社の書式・承認フロー・既存システム構成に合わせて「間」を埋めるAIを作ります。まずは1業務から小さく始めます。
- 保守運用と定着(PHASE 03) — 導入後の運用・改修を継続し、必要に応じて一部業務のBPOまで引き受けます。「使われないツール」で終わらせないための工程です。
自社にどれだけAI化の余地があるかを先に知りたい方は、10問1分のAI化余地診断から始めるのが手軽です。
よくある質問
今使っているSaaSを解約しないとAI導入はできませんか?
いいえ。連携ハブ型のAI導入は、基幹システム・ポータル・チャット・電子契約などの既存ツールを置き換えず、その間で人が行っている転記・突合・入力準備をAIが引き受ける設計です。現場の画面や操作を変えずに始められます。
ツールが多すぎて、何から手をつければよいかわかりません。
ツール単位ではなく業務単位で棚卸しするのが近道です。1件の申込・1件の反響が、どのツールを何回経由し、その間で誰が何分の手作業をしているかを書き出すと、時間を消費している「間」の工程が特定できます。
連携ハブ型とツール標準の連携機能は何が違いますか?
ツール標準の連携機能は、そのツールの守備範囲の中で用意されたものです。連携ハブ型は特定のツールに属さず、自社の業務フローに合わせて複数システムの間の転記・突合・チェックを設計します。既存の連携機能が使える箇所はそのまま活かします。
どんな作業が「間」の手作業にあたりますか?
代表例は、ポータル反響の基幹システムへの入力、申込書PDFから基幹・審査書類への転記、契約書と申込内容の突合、空室確認の電話、掲載情報の更新作業などです。いずれも特定のツールの中では完結せず、ツールとツールの間で人が担っている工程です。
まとめ — 足すのではなく、間を埋める
SaaS乱立問題の本質は、ツールの性能ではなく「間の工程が誰の守備範囲でもない」ことにあります。だからこそ、次の一手はツールの追加や乗り換えではなく、自社の業務フローのどの「間」に時間が残っているかの特定です。株式会社LogTechでは、無料オンライン相談(30分)と無料現場診断を提供しており、業務フローと削減余地をレポートにしてお渡ししています。診断だけで止めていただいて構いませんので、まずは無料相談からお気軽にご利用ください。
本記事のデモ実績は株式会社LogTechの測定によるものです。効果は書式・件数・運用体制によって変動します。外部システムとの連携は各システムの規約・運用ルールの範囲で設計します。