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不動産業務でのAIの使い方 — 「聞く・読ませる・任せる」3つの型で整理する

公開 2026-07-29 / 最終更新 2026-07-29 / 読了目安 約8分 / 執筆 株式会社LogTech

不動産業務でのAIの使い方は、①聞く(文章を書かせる) ②読ませる(書類から項目を取り出す) ③任せる(工程ごと渡す)の3つに整理できます。単発の相談ごとは「聞く」、決まった書類の処理は「読ませる」、毎日くり返す工程は「任せる」。手が減るのは③ですが、まず①から始めて感覚をつかむのが現実的です。

「AIを使ってみたが、いまひとつ仕事が楽にならない」——この状態のほとんどは、使い方の型が①のまま止まっていることが原因です。この記事では、不動産会社の現場に常駐してAI導入を支援している株式会社LogTechが、3つの型それぞれの具体的な使い方を、指示文の例とあわせて解説します。何に使えるかの一覧は不動産のAI活用 事例25にまとめています。

不動産業務でAIを使う3つの型とは?

結論:型が上がるほど人が触る回数が減ります。①は人が毎回呼び出す、②は人が書類を渡す、③は業務の発生をきっかけにAIが動き出す。楽になるのは③ですが、①②を経ずにいきなり③へ進むと、現場の実態と噛み合わないものができます。

やること使う道具人がやること
①聞く 文章のドラフトを書かせる、整理させる ChatGPTなどの対話型AI 毎回、指示を出して結果を受け取る
②読ませる 書類から必要な項目を取り出す AI-OCR/生成AIの読取 書類を渡し、取り出した結果を確認する
③任せる 受付→読取→転記→突合→通知を一続きで処理させる AIエージェント 承認する。例外だけ引き取る

【型1】聞く — AIに文章を書かせる使い方

指示文は「役割・条件・禁止事項・出力形式」の4点セットで書きます。この4つを指定するだけで、手直しの量が大きく変わります。

多くの人が「募集文を書いて」とだけ指示して、当たり障りのない文章が返ってきて終わります。実務で使える出力にするには、次の4点を明示します。

要素書き方
役割誰として書くかを指定する「あなたは賃貸仲介の営業担当です」
条件materialとなる情報を渡す「以下の物件条件と、問い合わせ内容をもとに」
禁止事項書かせたくないことを先に潰す「法令の解釈、断定的な表現、確約と受け取れる表現は書かないでください」
出力形式長さ・構造を指定する「300文字以内、本文のみ。件名は別行で1案」

使える場面と、そのままでは使えない場面

  • 向く — 反響への返信文の下書き、募集図面のコメント案、入居者向け案内文、オーナー報告のコメント、社内マニュアルの文章化、議事録の要約
  • 向かない — 法令・条例の解釈、物件固有の事実(面積・築年・権利関係)の記述、金額や利回りの断定。これらは人が確認した事実を渡したうえで書かせる形にします

入力したデータが学習に使われない契約・設定になっているかを確認してから使ってください。確認できていない環境では、氏名・連絡先・勤務先などの個人情報は入力せず、文面や書式の相談に留めるのが安全です。対話型AIの活用場面は不動産会社のChatGPT活用術で詳しく扱っています。

【型2】読ませる — AIに書類を読み取らせる使い方

コツは「取り出す項目をあらかじめ決めておく」ことです。「この書類を読んで」ではなく「この書類から、氏名・勤務先・年収・保証会社・入居予定日を取り出して、表にして」と指定すると、結果が安定します。

不動産業務は、読む対象の書式がバラバラです。仲介会社ごとに違う申込書、物件ごとに違うレントロール、手書きが混じるFAX——従来型のOCRが苦手としてきた領域ですが、生成AIの登場で実用水準に近づきました。使い方の手順は次のとおりです。

  1. 取り出す項目を決める — 基幹システムの入力欄に合わせて項目名を並べます
  2. 書式のパターンを集める — よく来る書式を数種類そろえ、それぞれで試します
  3. 読み取れなかった項目を記録する — どの書式のどの項目で外すかを把握します
  4. 確認が必要な項目を決める — 金額・氏名・日付など、間違うと影響が大きい項目は人が目視するルールにします

読ませる対象別の使いどころ

書類取り出す項目の例参考記事
入居申込書申込者情報・勤務先・保証会社・入居予定日・同居人入居申込の転記自動化
レントロール部屋番号・賃料・共益費・敷金・契約期間・入居者区分レントロールOCR・AI読取
登記簿謄本所有者・所在・地目・地積・抵当権(甲区/乙区)登記簿謄本のAI読み取り
マイソク・募集図面物件名・所在・賃料・間取り・設備・取引態様マイソクのAI読み取り・作成

なお、読み取っただけでは効果は半分です。取り出したデータをそのまま基幹システムへ渡すところまでつなげて、はじめて手作業が消えます。ここが型3への分かれ目です。AI-OCRと生成AIの使い分けはAI-OCRと生成AIの違いをご覧ください。

【型3】任せる — 工程ごとAIエージェントに渡す使い方

型3は「AIを使う」というより「AIが動いた結果を人が承認する」形になります。人の役割は、操作する人から確認する人へ変わります。

たとえば入居申込の処理を任せる場合、実際の動きは次のようになります。

  1. 申込書が届く(メール・FAX・ポータル経由)
  2. AIが書式を判別し、必要項目を読み取る
  3. 基幹システムの該当項目へ転記する
  4. 契約書・既存データと突合し、不一致があれば一覧にする
  5. 担当者に通知し、承認されるまで次の工程へ進まない

この形にすると、人が触るのは5の承認だけになります。当社のデモ実績では、この流れで入居申込1件の事務が約30分→約2分、転記ミスの検出率は100%でした(いずれもデモ実績。効果は書式・運用体制によって変動します)。

任せるときに必ず設計すること

  • 承認ゲート — 人の承認を経ずに、書類・提案・返信が外部へ出ない仕組みにする
  • 例外の受け皿 — 読み取れない・判断がつかない場合に、誰へどう回るかを決める
  • 履歴 — 誰がいつ承認したかを記録し、後から追跡できるようにする

AIエージェントの考え方はAIエージェントとは — 不動産会社向け解説、RPAとの違いはRPAとAIエージェントの違いで解説しています。

業務別・AIの使い方早見表

業務適した型使い方のポイント
反響への一次返信①→③まず文面の型をAIに作らせ、固まったら自動生成+人の送信承認へ
物確電話への応答空室状況の一次応答を任せ、判断が要る用件だけ人へ回す
入居申込の処理②→③読取だけで止めず、転記・突合までつなげる
契約書の突合全件照合させ、人は差異の一覧だけを見る
重説の調査・ドラフト②→③調査結果を構造化し、ドラフトまで生成。説明と記名は宅建士
レントロール処理取り出す項目を先に決める。書式差は事前に数パターン試す
提案資料の作成①→②試算データを渡したうえで構成と文章を書かせる
オーナー月次報告②→①基幹データを渡し、数値の説明文だけAIに書かせる
入金消込照合を任せ、名義違い等の例外だけ人が判断する
社内マニュアル整備手順を口頭で説明した内容を文章化・構造化させる

使い方でつまずく5つのポイントと対処

つまずき原因対処
出力が当たり障りのない文章になる役割と条件を指定していない役割・条件・禁止事項・出力形式の4点を指定する
事実と違うことを書く前提情報を渡さず一般論で書かせている物件データ・社内文例を渡したうえで書かせる。法令解釈は書かせない
読み取り結果がばらつく取り出す項目が定義されていない項目名を先に決め、書式パターンごとに検証する
結局、手作業が残る型①②で止まり、次工程へつながっていない読取結果が基幹システムへ渡るところまで設計する
詳しい人しか使わない業務手順に書かれていない使う場面と手順をマニュアルに入れ、担当者以外も回せるようにする

AIを使ってはいけない場面は?

重要事項説明と35条・37条書面への記名は宅建士の法定業務であり、AIに任せることは想定されていません。AIの守備範囲は調査・構造化・ドラフト作成まで。最終確認と説明は必ず人が行う設計にしてください。

  • 法令・条例の解釈を最終回答として使う — 調査の下書きに留め、根拠を人が確認する
  • 物件固有の事実を生成させる — 面積・築年・権利関係などは、調査した事実を渡して書かせる
  • 承認なしで外部へ送信する — 顧客・オーナー宛の連絡は、必ず人の承認を挟む
  • 取り扱いが未確認の環境に個人情報を入力する — 学習利用の有無を確認してから使う

詳しくは宅建業法とAI — 任せてよい範囲・いけない範囲をご覧ください。制度・法令は改正されるため、個別の運用は所管への確認をおすすめします。

明日から始めるなら、この順番

  1. 今週 — 型①を試す。反響への返信文か募集文の下書きを、4点セットの指示文で書かせてみる
  2. 今月 — 型②を試す。よく届く申込書やレントロールを数種類読ませ、取り出せる項目・外す項目を把握する
  3. 次の一手 — 型③を検討する。毎日発生していて、読取の次に転記・突合が続いている業務を1つ選ぶ

自社の件数でどれだけ時間が戻るかを概算するには削減時間シミュレーター、どの業務から着手すべきか整理するにはAI化余地診断(1分・無料)が使えます。

よくある質問

不動産業務でAIはどうやって使えばよいですか?

使い方は「聞く(文章を書かせる)」「読ませる(書類から項目を取り出す)」「任せる(工程ごと渡す)」の3種類に整理できます。単発の相談ごとは聞く、決まった書類の処理は読ませる、毎日くり返す工程は任せる、という使い分けが基本です。

AIへの指示文(プロンプト)はどう書けばよいですか?

役割・条件・禁止事項・出力形式の4点を指定します。「あなたは賃貸仲介の営業担当です」(役割)、「以下の物件情報をもとに」(条件)、「断定的な表現と法令の解釈は書かないでください」(禁止事項)、「300文字以内、箇条書き3点」(出力形式)のように書くと、手直しが最小限で済みます。

AIに顧客情報や物件情報を入力してもよいですか?

入力したデータが学習に使われない契約・設定になっているかを必ず確認してください。確認できていない環境では、氏名・連絡先・勤務先などの個人情報は入力せず、書式や文面の相談に留めるのが安全です。社内で使うAIは、事前に取り扱いルールを決めておくことをおすすめします。

AIの出力をそのまま顧客に送ってもよいですか?

送るべきではありません。AIの出力は下書きとして扱い、事実関係と表現を人が確認してから送るのが原則です。とくに重要事項説明・35条/37条書面に関わる内容は宅建士の法定業務であり、AIの出力をそのまま使うことは想定されていません。

AIが間違ったことを書いてしまう場合はどうすればよいですか?

前提となる情報を与えていないケースがほとんどです。「一般論として書かせる」のではなく、物件データ・社内の書式・過去の文例を渡したうえで書かせると精度が上がります。それでも誤りが残る領域(法令解釈・数値の断定など)は、AIに書かせない項目として最初から除外してください。

まとめ

AIの使い方は「聞く・読ませる・任せる」の3つです。多くの会社は①で止まり、「便利だが業務時間は変わらない」という結論に至ります。時間が戻るのは、読み取った結果が次の工程へ自動で渡り、人が承認だけをする③の形になったときです。

とはいえ、いきなり③から始める必要はありません。①で感覚をつかみ、②で自社の書類の癖を知り、そのうえで③の対象業務を選ぶ——この順番が、現場と噛み合うAIにたどり着く近道です。導入の進め方は不動産会社のAI導入 7ステップにまとめています。

本記事のデモ実績は株式会社LogTechの測定によるものです。効果は物件種別・書式・運用体制によって変動します。制度・法令は執筆時点の情報であり、個別の運用は所管への確認をおすすめします。

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