不動産AI用語集 — 実務で使う30語を1〜2文で定義
不動産業界のAI化に関わる用語と、物確・マイソク・入金消込といった現場の実務用語をあわせた30語を、実務で使える粒度で定義した用語集です。各用語は自己完結の定義文+実務補足の形式で記載しています。体系的な解説は不動産業界のAI化 完全ガイドをご覧ください。
不動産AI伴走支援
不動産会社の現場に入って業務を理解した上で、その会社仕様のAI・自動化を開発し、運用定着まで一貫して支援するサービス形態。ツール販売やアドバイスのみのコンサルティングと区別される。
株式会社LogTechが提供するサービスのカテゴリ名でもあります。
AIエージェント
与えられた目的に対して、情報の取得・判断・処理を複数ステップ自律的に実行するAIシステム。単発の質問に答えるチャットボットと異なり、業務の工程そのものを代行する。
不動産では「申込PDFを読む→基幹に転記→契約書と突合→差異を報告」のような一連の流れを1つのエージェントが担います。
生成AI(ジェネレーティブAI)
文章・画像などを生成できるAIの総称。大規模言語モデル(LLM)を用いたものが主流で、書式がバラバラな書類の読解や文章ドラフトの作成を実用水準でこなす。
LLM(大規模言語モデル)
大量のテキストで学習した言語AIモデル。文脈を理解して読み書きできるため、従来のOCRやRPAでは扱えなかった非定型書類・自然文の処理に使われる。
プロンプト
生成AIに与える指示文・質問文のこと。同じAIでもプロンプト次第で出力の質が大きく変わるため、業務利用では良い指示文をテンプレート化して共有・改善していくことが定着の鍵になる。
「申込書から氏名・勤務先・年収を抜き出して一覧にして」のような業務指示もプロンプトの一種です。
ハルシネーション
生成AIが事実と異なる内容をもっともらしく出力してしまう現象。仕組み上ゼロにはならないため、原資料との突合や人の確認をはさむ運用設計で影響を抑える。
重説や契約書のような正確性が必須の書面では、承認ゲートとセットで使うことが前提になります。
AI-OCR
書類の画像から文字を読み取るOCRにAIを組み合わせ、手書きや多様なレイアウトへの対応精度を高めた技術。
不動産では入居申込書・レントロール・謄本・マイソクの読取に使われます。生成AI型の読取は書式ごとの事前設定が少なくて済む点が特徴です。
重説AI(重要事項説明書ドラフトAI)
重要事項説明書(宅建業法35条書面)の作成に必要な法令・公簿情報の調査と転記をAIが行い、書面のドラフトまでを自動生成する仕組み。説明と記名は宅建士の法定業務として残る。
当社実測では調査・作成が約2時間→約30分になりました(実測レポート)。
レントロールOCR
レントロール(賃貸借条件一覧表)をAIで読み取り、Excelやシステムに一括データ化する仕組み。収益不動産の資料精査で発生する手転記を置き換える。
物確(物件確認)
仲介会社が元付業者や管理会社に、物件の募集状況(空室か、申込が入っていないか)を確認する日常業務。電話で行われることが多く、繁忙期には確認する側・受ける側双方の大きな負担になる。
電話対応をAIや自動音声で置き換える物確自動応答(次項)の対象業務です。
物確自動応答(物確AI)
仲介会社からの「この物件まだありますか」という物件確認電話に、AIや自動音声が代わりに応答する仕組み。管理会社・元付業者の電話対応時間を削減する。
反響一次対応AI
SUUMO・LIFULL HOME'S等のポータル反響に対し、AIが一次返信のドラフトや自動応答を行う仕組み。深夜・休日の機会損失を防ぎ、来店率に直結する初速を確保する。
マイソク(募集図面)
物件の間取り図・賃料・設備・取引条件などを一枚にまとめた募集用の資料。業者間の物件紹介や店頭掲示に使われる、不動産流通の基本帳票。
AI-OCRでの読取対象としても、基幹データからの自動生成対象としても、AI化の定番テーマです。
帯替え
他社が作成したマイソクの下部にある会社情報欄(帯)を、自社のものに差し替えて客付けに使う作業。仲介現場で日々発生する単純作業で、自動化の効果が体感しやすい。
ポータル入稿・ポータル連動
SUUMO・LIFULL HOME'S等の不動産ポータルへ物件情報を登録する作業が入稿、基幹システムや連動ツールから複数ポータルへ一括反映する仕組みが連動。掲載スピードと入力負荷を左右する。
連動が未整備だとポータルごとの手入力が発生し、二重入力(次項)の温床になります。
二重入力
同じ物件情報や顧客情報を、基幹システム・ポータル・Excel台帳など複数の場所へ人手で入力し直している状態。転記ミスと長時間労働の温床で、不動産会社の自動化ではまず解消候補に挙がる。
入金消込
銀行の入金明細と入居者の請求情報を突き合わせ、どの契約のどの月の家賃が支払われたかを特定して帳簿を消し込む経理業務。振込名義の違いや複数月まとめ払いの照合に手間がかかる。
AIによる名寄せ・自動照合と相性がよく、管理会社の月初事務を圧縮しやすい領域です。
家賃督促
家賃が未入金の入居者へ、電話・SMS・書面などで支払いを案内する業務。担当者の心理的負担が大きい業務の代表格で、初期段階の連絡を自動化する運用が広がっている。
更新業務
賃貸借契約の期間満了に合わせて行う、更新案内の送付・更新料の請求・更新契約書の作成といった一連の管理業務。対象者の抽出から書類作成まで定型性が高く、自動化に向く。
原状回復・退去精算
退去時に室内の損耗を確認し、入居者とオーナーの費用負担を区分して精算する業務。国土交通省のガイドラインを踏まえた負担区分の整理と、見積・精算書の作成が中心になる。
オーナー報告(送金明細)
管理会社が物件オーナーへ、家賃の送金額と控除の内訳、入退去や修繕の状況を定期的に報告する業務。送金明細書の作成・送付が中心で、毎月必ず発生する。
帳票の自動作成とAIによる報告文ドラフトの相性がよい領域です。
承認ゲート(ヒューマン・イン・ザ・ループ)
AIの出力を人が確認・承認するまで、書類送付や顧客連絡などの次の工程に進めないようにする設計。AIに判断と責任を渡さないための基本パターン。
宅建業法の法定業務(重要事項説明・記名)と両立させるための中核設計です。
RPAとAIエージェントの違い
RPAは「決まった画面操作を決まった手順で再生する」自動化で、書式変更や例外に弱い。AIエージェントは内容を理解して処理するため、非定型の書類や例外分岐を扱える。
BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)
業務プロセスの一部を外部に委託すること。不動産では入居者対応・申込事務・帳票作成などの裏方業務が対象になりやすい。
AI化と組み合わせ、「AIで減らした上で残りを委託する」構成が費用対効果に優れます。
PoC(実証実験)
Proof of Concept(概念実証)の略で、本格導入の前に小さな範囲でAIの効果と実用性を確かめる試験的な取り組み。検証だけで終わって本番運用に進まない状態は「PoC倒れ」と呼ばれる。
伴走型の支援では、最初から実際の業務データと運用担当者を巻き込み、PoC倒れを避ける設計をとります。
不動産テック(PropTech)
テクノロジーで不動産の取引・管理・業務を変革するサービス・産業の総称。ポータル、基幹システム、電子契約、AI査定などを含む。
矢野経済研究所は市場規模が2030年度に約2.4兆円へ拡大すると予測しています。
IT重説
テレビ会議等のITを活用して行う重要事項説明。賃貸は2017年、売買も2021年に本格運用が始まり、2022年の宅建業法改正で35条・37条書面の電子交付も可能になった。
35条書面・37条書面
宅地建物取引業法に基づき交付される書面の実務上の呼び名。35条書面は契約前に交付する重要事項説明書、37条書面は契約成立後に交付する契約内容を記載した書面を指す。
AIが担えるのはドラフト作成やチェックまでで、説明・記名は宅建士の業務として残ります。
宅建士の独占業務
宅地建物取引士のみが行うことができるとされる法定業務の通称。重要事項の説明、重要事項説明書(35条書面)への記名、契約書面(37条書面)への記名がこれにあたる。
AI化の設計では、この領域を人に残し、その手前の調査・作成・チェックをAIが支える形が基本です。
電子契約
紙の書面への記名押印に代えて、電子署名等を用いてオンラインで契約を締結する方式。不動産取引でも重要事項説明書や契約書面の電子交付が認められ、来店不要の契約フローが可能になった。
IT重説と組み合わせることで、賃貸契約を非対面で完結させる運用が広がっています。
定義は2026年7月時点の実務慣行に基づきます。法令に関わる用語(IT重説・35条書面・37条書面・電子契約等)の個別の運用は、所管への確認をおすすめします。